認知症になっても安心して暮らすための切り札「家族信託」について

みなさんは「信託」と聞くと何を思い浮かべますか?

 

おそらくほとんどの方は、「信託銀行」とか、「投資信託」といったような言葉が思いつくのではないでしょうか?

いわゆる、資産運用としての信託ですね。

そして、こう思う方もいるかもしれません。

「どうせ、お金持ちの人のための制度なんでしょう?」と。

 

たしかに、信託銀行のような金融機関にお金を預け、株や外貨や国債に投資して利益を上げる、いわゆる「投資信託」にはそのような側面が強いと思います。

金銭的に余裕がある方などが、その余剰資金なりを運用してさらに増やしましょう、というのが投資信託の目的です。

 

しかし、家族信託の目的は全く違います。

 

家族信託の大きな目的の1つは「認知症対策」です。

 

※他にも有効な活用方法はいくつもありますが、まずはイメージしやすいところから始めます。

●資産運用とは違う信託

そもそも「信託」という言葉自体には、資産運用といった意味合いはありません。

 

信託とは、その名の通り、「『信』じて『託』す」。

要は、「あなたのことを信用して任せます」という意味のものです。

 

これを「投資(=運用、お金儲け)」を目的として行うから「投資信託」なのです。

「あなたのことを信用してお金を預けます。だからこれを運用して増やしてね。」ということです。

 

家族信託には、基本的にお金を増やすという目的はありません。

その名の通り「家族を信用して任せます」というニュアンスだけです。

 

では、なぜわざわざ自分以外の家族に任せるのか?

そう、自分で管理ができなくなった時に備えるため、つまり、認知症対策です。

 

 

認知症になってしまうと、家を売ったり預金を下ろしたりはできません。

もしアパートなどの大家さんの場合は、入居者との契約などもできません。

 

認知症だけでなく、不幸にも事故や脳梗塞などで、意識不明の状態になってしまっても同様です。

そのような「万が一」に備えて、信頼できる家族にあらかじめ財産を「信じて任せておく」、これが「家族信託」です。

 

「終活」が亡くなった後に備えるものであるのに対し、「家族信託」は認知症(をはじめとする「生きてはいるけど意思疎通できない状態」)に備えるためのものです。

 

 

 

これは保険と似ています。

事故や病気になった時に備えて保険に入っておく。

 

これと同様に、認知症になった時に備えて「家族信託」をしておく。

 

結果、最期まで認知症になることなく、ピンピンコロリで天寿を全うできました、信託をしなくてもよかったかもしれないなぁ、というのであれば、それはそれで結構なことです。

 

保険だって、多くの人が加入していても、実際に事故に遭って保険金を請求するケースはまれです。

しかしながら、事故に遭って、病気になって、家が火事になってから「そんな保険があるなら入っておけばよかった!」と言ってももう後の祭りなのです。

 

家族信託も、認知症になってしまってから、「そんな制度があるなら使っておけばよかった!」と言ってももう手遅れです。

 

 

家族信託はあくまで「契約」ですから、本人が認知症になってしまった後から利用することはできません。準備なしで認知症になるのは、無保険で事故に遭うのと同じなのです。

●家族信託で何ができるの?

将来の万が一(認知症など)に備えて家族信託をしておけば、ご本人の判断能力が低下したり、コミュニケーションが難しくなったとしても、信頼できる家族がご本人の代わりに財産の管理を行うことができます。

 

具体的には、ご本人の預金から施設のお金や病院代を払ったり、空き家になった自宅を売却したり、貸家や貸し駐車場の家賃管理や契約などです。

 

何の準備もせずにご本人が認知症などになってしまうと、たとえ家族といえどもこれらを勝手に行うことはできません。

そうなると、家族が施設のお金を立て替えたり、売ればお金になるはずの家を売ることができなかったり、新しい入居者との契約ができずに空き家のままになってしまったり…といった、様々な不都合が生じてしまいます。

 

周囲の方が困らないように、事前に家族信託を利用することで、こういったトラブルを防ぐことが可能です。

●家族がいない人は利用できない?

「家族信託」という名前から、

 

「家族がいない方は利用ができないのでは?」

「家族というのは具体的には何親等までをいうのか?」

 

といったようなご質問を頂くことがありますが、家族信託は、必ずしも家族間でなくとも利用することが可能です。

むしろ、家族のいない「おひとりさま」こそ、家族信託を利用する価値は大きいとさえ言えるのです。

 

というのも、先ほどご本人が認知症などになると、家族であってもできないことが多く、不都合が生じると述べました。

しかし一方で、近しい家族(配偶者やお子様など)であれば、例えば銀行でお金を下ろす際に、事情次第では、ある程度は柔軟に対応してくれる可能性はあります。

 

しかしながら、これが家族関係のない他人であれば、対応はより厳しいものになるでしょう。

たとえそれが内縁関係の方や、身の回りのお世話をされている方であったとしても、法律的には「赤の他人」ということになりますから、お金が絡むような行為をご本人の代わりに行うのは、家族以上に非常にハードルが高いと言えます。

 

そこで、家族信託を利用して、きちんとした形で財産の管理や処分を任せておくという事が大切になってきます。

家族信託で、第三者にもわかる形で財産を預けておけば、ご本人と意思疎通が難しくなった後でも、問題なくお金や財産を管理することが可能です。

 

ただし、大事な財産を預けるわけですから、当然相手の方は十分に信頼できる方でなければなりません。そういう意味では、「『家族(同然に信頼できる方)』を『信』じて『託』す」ことが家族信託であると言えます。

 

●家族信託をお願いしたいと思ったら

家族信託は、「信託契約」という契約を行う必要があります。

 

この信託契約の内容は、ご本人の状況や財産の内容、ご家族構成、ご希望内容によってかなり細かい部分までお打ち合わせが必要なものになります。

 

そのため、その作成には専門的知見や経験を有する専門家の関与が不可欠になります。

 

当法人には、家族信託の経験が豊富な弁護士、司法書士が在籍しておりますので、ご相談から契約書の作成、必要に応じて信託登記手続きまでを安心してお任せ頂くことが可能です。

お気軽にお問い合わせください。

 


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